人生読本~20代からの読書日記~: 10月 2016

2016年10月26日水曜日

「すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法」菅原 洋平著

今回の本はこちら。

 


●著者・・・菅原 洋平著

●価格・・・1380円+税


この本はリハビリテーションの専門家である“作業療法士”の菅原洋平さんが、“脳の使い方”という観点から僕たちが物事をすぐやるのかやらないのか、つまり行動力に影響を及ぼす方法を教えてくれています。


僕たちは自分の行動力がやる気や才能といったものに左右され、またそういったもので変化させようとしたりします。

ですが実際に行動力を向上させるために必要なのは精神力ではなく、自分の“脳の使い方”を知り、自分が行動しやすいように仕向けてやることだったのです。


この本ではリハビリの現場での例も挙げながら説明してくれますが、身体に傷や障害を抱えた人達にはっきり効果が表れるのですから僕たちが健康であれば応用するのはそう難しいことではないはずです。


では行動力を高めるためには、なにを意識して行ったらいいのでしょうか。


①起床から4時間後に頭がスッキリと冴えていますか?


脳が「すぐやる」モードになるためには、もちろん睡眠不足ではいけません。そのような状態ではどんなに技術を駆使しても「すぐやる」モードにはならないでしょうし、頭がぼーっとして外から入ってくる情報にも鈍い反応しかできません。


起床から4時間後というのは脳の活動が最も活発になる「1日で一番頭がいい状態」の瞬間です。

ですから、この時間に自分の頭がスッキリしているかどうかで睡眠の質を確かめることができます。


必要な睡眠時間は個人差がありますし、同じ人でも季節によって変わってきます。なので、睡眠時間などではなく「起床から4時間後」をチェックすることでその日の状態を知ることができるのです。


さらに睡眠というのは、その人の「問題に対する姿勢」がもろに出てしまいます。

自分の睡眠の状態を知り、日々高い睡眠の質を保っている人は「問題を起こさないようにする」という考え方ができている人です。つまり自分の人生の時間をマネジメントする意識があるということです。

これとは反対に睡眠が不足しがちな人は「問題が起こってから対処する」と考えている傾向があります。例えば朝起きられないから目覚まし時計を増やしたり栄養ドリンクを飲むようにしたり、などです。


この「問題に対する姿勢」は、普段の仕事の様子にも同じように表れてしまいます。


思考の傾向を直すためにも、そして毎日スッキリした頭で高い行動力を発揮するためにも、まずは睡眠の質から改善していく必要があるのです。


②真似したい相手と同じ方向を向き、横並びの状態になる


脳には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経群があり、この働きにより人は無意識に他人の行動の真似をしてしまいます。テレビなどでスポーツを観戦してると自分もやってる気分になるのもこのミラーニューロンの働きによるものです。


この真似をする性質は良いことでも悪いことでも関係なく働きます。この本のテーマでいうと「すぐやらない人」が自分の周りにいた場合、自分もその人を無意識に真似てしまい「すぐやらない状態」になってしまうのです。


このため、脳に真似をさせる相手には注意しなければなりません。

この性質を使い「すぐやる」ようになるためには、真似したくない「すぐやらない人」は極力自分の目に入らないようにし、真似したい「すぐやる人」が視界に入るようにします。


この時、その人の横で同じ向きになるように並びます。


向かい合って行動を見た場合、一度脳の中でその行動を反転させて自分にあてはめなければいけません。これ自体は普段からやっていることなのですが、それでも脳には立派な課題となり、エネルギーを消費してしまいます。

横並びなら自分も見た通りに行動すればいいので、脳への負担も少なく真似しやすくなります。


③「わざ言語を」理解するためには、自分が「わざ言語」を使ってみるしかない


「わざ言語」とは「自分の体験から得た感覚をもとにして組み立てた言語」のことです。

例えば声楽家が高音を出すときにその方法を「声は頭のてっぺんから出すように」と表現したりするものです。


この「わざ言語」を使う「できる人」は、実はその時点で「できない人」の感覚を忘れてしまっています。

そしてもちろん「できない人」はその「わざ言語」によるできる感覚がわかりません。

なのでたとえ「すぐやる人」の話を「すぐやらない人」が聞いても、そのまま自分が「すぐやる人」になれるわけではないのです。


この両者を分けている壁が「わざ言語」です。

つまり、「すぐやらない人」が「すぐやる人」になるためにはこの「わざ言語」を理解し、壁を乗り越える必要があるのです。


しかし前述したように「わざ言語」を理解できないから「すぐやらない人」なわけですから、そう簡単に100%理解できるようにはなりません。

それでも少しでも実行しその感覚を言葉にする、つまり「わざ言語」を使っていくことで多少なら理解することができるはずです。そうなれば「すぐやる人」に、少しずつですが近づくことができるのです。



この本では脳の機能の説明と共に他にも多くの「すぐやる」ための技術を教えてくれています。

「すぐやる」ために必要なのは気合や根性ではなく、あくまで脳の性質に沿った考え方と行動です。

脳の影響を受けるだけではなく、逆に脳に影響を与え自分の行動を変え「すぐやる人」になっていきましょう。




関連書籍記事
「結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方」茂木 健一郎著

2016年10月8日土曜日

「仕事の結果は「はじめる前」に決まっている」大嶋 祥誉著

今回の本はこちら。




●書名・・・仕事の結果は「はじめる前」に決まっている マッキンゼーで学んだ段取りの技法
●著者・・・大嶋 祥誉著


この「仕事の結果は「はじめる前」に決まっている」は、世界最高峰のコンサルティング会社ともいわれるマッキンゼーでコンサルタントとして働いていた経歴を持つ著者による、限られた時間の中で大きな成果を出すための仕事の段取り術について書かれた本です。


限られた時間の中で最高の質のアウトプットを出す思考法、著者はこれを「ミニマム思考」と呼んでいます。


「ミニマム思考」では仕事の無駄を省き重要な点にフォーカスすることで、仕事の質とスピードを向上させていきます。


そのために“仕事をはじめる前の段取り”が重要なのですね。



①あなたの提供するバリュー(価値)は何でしょうか?


ミニマム思考において最も重要な概念がこのバリューです。


バリューとは価値という意味ですが、ミニマム思考においてはその仕事をする上での“自分もしくは相手にとっての「メリット」”といったものです。


自分の仕事は自分自身にとってどんなメリットがあるのか。また相手にどんなメリットを提供しているのか。このバリューはどんな仕事にも存在します。そしてバリューとは誰かに決められたりなんとなく決まるものではなく、その仕事をする自分自身で決めるものです。


このバリューが意識できると、その仕事をするうえで必要なことや無駄なことが自然と浮き彫りになってきます。無駄なことはやらなければいいので、始める前から時間を短縮することができます。


逆にこのバリューがしっかりと明確になっていないとどんな作業が必要なのかわからず迷走してしまい、余計に時間がかかってしまいます。


②仮説を意識していないと、どこから手を付けていいかわからない

バリューを決めたら、次はそのバリューを生み出すための方法を考える必要があります。


しかしこの時なにもとっかかりがないと、それこそ方法は無数に存在するのでどれからやればいいのか、またどれが真に効果的なのか分からず途方に暮れてしまいます。


そこで、バリューを生み出すための仮のアイデア、“仮説”を立ててその後の行動を決めていきます。


適切な仮説が立てられればそれを解決することでバリューが生み出されるので、一番短時間で済みます。


そして適切な仮説を立てるためには明確なゴール(バリュー)をイメージし、それに沿った情報を集めることが大切になります。


こうして仮説を立て検証し、違っていたらまた別の仮説を立てる。



仮説がなければどの問題から手を付ければいいのかわかりませんが、仮説を立てることで逆にやることが絞られ短時間で質の高いアウトプットを出すことにつながります。


③高いバリューを生み出せるミニマム思考の人は、五感が鈍らないような習慣を持っている


バリューを決めるにも仮説を立てるにも情報収集が欠かせません。


しかし疲れて集中力が鈍ってしまうと、手に入れた情報の意味を正しく理解することができなくなってしまいます。そもそも集中力が鈍っているので情報の取りこぼしも起こるでしょうし、作業自体もはかどりません。



ミニマム思考の人は“最小の労力で成果を出す”という考え方をするので、そういう状況になる前に体調を整えてしまいます。


具体的には、睡眠不足にならないように常にしっかり睡眠をとったり、定期的に瞑想などをして頭の中を整理したりします。



人の脳はぼーっとしている時間にも活動的に働いているようで、これを「デフォルトモードネットワーク」といいます。

この時脳は蓄積された情報をつなぎ合わせ、ひとつの意味につなげる活動をしています。点と点をつなぎ合わせ線や面にしていくようなものですね。

そうすることで新たなアイデアが生まれ、解決の突破口になったりします。



このような機会を逃さないためにも、ミニマム思考の人は定期的にしっかり休息をとり自分の五感が常に万全な状態であるように気をつけるのです。

まとめ


最近は社会全体のテンポがスピードアップしてきて「走りながら考えろ」などと言われたりもしますが、人間はそういくつも別のことを一緒にできるわけではありません。必死に走っている時は走っていることにどうしても意識が向いてしまい、そのほかのより効果的な方法になかなか気づくことができません。


限られた時間で質の高いアウトプットを出すためには「はじめる前」にその仕事の最終成果物(目的)を考えバリュー(価値)を決定し、仮説を立てることで作業の全体を設計し実行する。


こうすることで無駄を省き、周りが驚くほどクォリティの高い仕事ができるようになるでしょう。




2016年10月5日水曜日

「レバレッジ時間術 ノーリスク・ハイリターンの成功原則」本田 直之著


今回の本はこちら。

 


●著者・・・本田 直之著




とかく成果が重視される最近の社会で、時間は最も貴重な資源です。誰でも平等に一日24時間しかありませんので、その中でより大きい成果を出そうと思ったら効率を上げ、時間の密度を濃くするしかありません。


「レバレッジ」とは「てこの原理」のことです。

この本は時間という限られた資源に対し“てこの原理”を働かせることで、最小限の時間で最大限の成果をあげるための心構えや方法論が書かれています。


著者の本田直之さんは他にも「レバレッジ・リーディング」や「レバレッジ・シンキング」など多数の著書がありますが、今回の「レバレッジ時間術」はその中でも特に時間に焦点を当てた内容になっています。



①時間投資の基本は「仕組み」づくり


定期的に行う仕事や作業の場合、毎回一から考えて作業を始めていたのでは何度も同じ内容を考えることになってしまいます。

そこで毎回同じ部分はマニュアルを作ったりチェックリストを作ったりして、たいして考えなくても常に同じ質の作業ができるようにする。これが「仕組み」作りです。

こうすることでその作業を行うごとに毎回、「仕組み」を利用しない場合より時間を短縮することができます。


またその仕組みにより他の人でも自分と同じようにその作業ができるようになれば、その作業を他人に任せることで自分が使う時間はごくわずかになりますし。
また多くの人に教えて規模を大きくすることもできます。


「仕組み」作りには相当な時間がかかりますが、一度作ってしまえば何度でもその恩恵を受けることができます。こうして短縮された時間でさらに別の仕事の「仕組み」作りを行う。そしてまた短縮された時間で別の仕事を…と続けていくことができるため、「仕組み」づくりへの時間投資は“複利的に”増やしていくことが可能なのです。


②課題を設定し、俯瞰逆算してスケジュールに乗せること。そこまでできれば、あとはそれを日々実行していくのみ




何か予定が生じたらそれを手帳に書き込む。そのような方法でも日々の仕事をすることはできるのですが、これでは自分以外の力によって常に時間を支配されてしまいます。

空いた時間ができたらそこで読書をしたり勉強をしたりしたいと思っても、そこに急に仕事が入ったり問題が起きたりして結局当初の目的を果たすことは出来ません。


本田さんをこれを「パッシブ(受動的な)・スケジュール」と呼んでいます。

時間投資の考え方に大切なのはこれと反対の「アクティブ(能動的な)・スケジュール」です。


「アクティブ・スケジュール」とは逆算型、つまり最後から順番に決めていく方法です。


まずその時の課題をクリアするゴールを設定します。この課題とは別にネガティブなものではなく仕事上の成果でもいいし自分が新たに学びたいことでもいいでしょう。

ゴールとはその課題の内容と、その課題を達成する期日です。○月×日までに売り上げを○%上げる、というような感じですね。


このようにゴールを設定することで、クリアするためにはいつまでにどこまで進めなければならないという中継地点が明確になります。これがわかれば、あとはそれをもとに日々のスケジュールを組み地道に行動に移していきます。


これは無駄な作業を省くのにも有効です。発生した仕事から順に処理しようとすると、本当は達成したい課題に関係ない仕事も気づかずやってしまいどんどん作業時間が増えていってしまい、最終的に期日に間に合わないなんてことにもなりかねません。

逆に期日と最低限の目標がわかっていれば、それに不必要な作業は最初から省くことができます。こうすることで短い時間でも課題をクリアする確率が格段に上がります。


③自分でゼロから始めるのと、すぐれた先輩のやり方を学んで、そこからスタートするのとでは、時間効率が圧倒的に違う



どんなことでも全く知らないことを最初から自分でやろうと思ったらかなり苦労することになると思います。もちろんそこで苦労するから身に付くんだという考え方もありますが、それにしても成果に対して時間がかかりすぎます。


また応用方法も、世の中にすでにいろいろ試している先人がたくさんいるのに、その人たちと同じ試行錯誤を繰り返すことになりかねません。


これらを避けるためには、同じようなことをやっていた先輩などに聞いてその方法を真似すればいいのです。

もちろん直接の先輩でもいいし本などで勉強してという形でもいいでしょう。

とにかくまず真似をすることで、最低限その元の人と同じくらいの水準まで自分のレベルを一気に上げることができます。そこから、自分なりの試行錯誤をすることに時間をかければいいのです。


スポーツや演劇でも先輩の技術を真似して盗むのは日常的に行われている勉強の基本です。

一般の方でも、真似をすることでかなり時間を有効に使うことができます。



時間とは人間全員に平等に与えられる唯一の資産です。

しかも時間はお金のようにためることもできなければ稼いで増やすこともできません。
だからこそ、お金以上に真剣に考え工夫することによって効率を上げ、より大きな成果を出し、最終的に自分の目指す目標に到達する力として無駄なく利用していきましょう。






関連書籍記事
「レバレッジ勉強法」本田 直之著
「レバレッジ・シンキング」本田 直之著