●著者・・・アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳
●価格・・・1600円+税
「GRIT」とは英語で“根性や気骨・失敗や恐れに対して歯を食いしばる(耐える)”という意味です。
この本ではその「GRIT」を「やり抜く力」と表現しています。
著者のアンジェラ・ダックワースさんは“人生で何を成し遂げられるかは「生まれ持った才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高い”と突き止めたことで、別名「天才賞」とも言われる「マッカーサー賞」を受賞した方です。
「やり抜く力」について話しているTEDトーク「成功のカギは、やり抜く力」の動画の視聴回数はなんと900万回以上に上ります。
この「GRIT やり抜く力」ではこれまでに行われた様々な実験や取材から、何かをやり遂げるのにいかに「やり抜く力」が重要かを説明しています。
また後半では自分自身の「やり抜く力」を伸ばす方法も様々な観点から書かれているので、実践していくことで他の全ての活動に良い影響を及ぼすことができます。
① 肝心なときにどれだけがんばれるかは、もちろん重要なことだが、進歩の妨げとなるのは“途中でやめてしまうこと”だ
1940年に行われたランニングマシンを使った実験で、過度な負荷をかけて走らせた学生たちのその後を調べたことで走った分数を見ればその後の人生における心理学的適応状態(一般的な社会生活を問題なく送れること)が驚くほど正確に予想できることがわかりました。
しかしその時走った分数というのは、体格や基礎体力の違いとはさほど関係がなかったそうです。
つまり、人生の長いマラソンでどこまで頑張れるかは、体格や基礎体力の違いよりも圧倒的に「努力」にかかっているということが分かったのです。
この時学生に走ってもらったのは一回だけだったそうですが、もし翌日以降も複数回走ることを許していたら「やり抜く力」の強い学生は何度も挑戦したのではないかと著者は予想しています。
そして複数回挑戦する中でひたすら頑張る人もいるでしょうし、どうやったら効率よく走れるのかを追求して結果を伸ばす人もいたかもしれません。
これは他のスキルも同じことで、ただ続けるだけで上達する可能性は常に残っているのです。
逆に、途中でやめてしまえば結果はそこまででスキルの上達も終わり。
何事も上達するためにはその時頑張るだけではなく、継続的に頑張り続けることが重要なのです。
② 必死に努力する以前に、まず楽しむことが大事
何事も“好き”なだけで上達するほど世の中は甘くありません。
練習し、研究し、そのことについて常に学び続ける必要があります。
しかし、だからこそ好きでもないことはなおさら上達するはずがないのです。
ベンジャミン・ブルームという心理学者によるとスキルは「数年ごとに3段階で」進歩するそうです。
「初期」は興味を見つけて掘り下げていく段階なのですが、この時は基礎的なことを遊びを通して学び興味を損なわないようにすることが重要です。自主性も大事で、押し付けや無理強いは良くありません。
「初期」で厳しくしすぎるとその後興味を失ったり、燃え尽き症候群となってしまう可能性が高まってしまいます。このように興味を損なってしまうと再び興味を持つことはなかなか難しいので、注意が必要です。
同様に子育てでも最初はやるべきことを押し付けるのではなく、子供が興味を持つことが何なのかしっかり観察することが重要です。
③ 自分の「やり抜く力」を強化したいなら、「やり抜く力」の強い文化を見つけ、その一員となること
自分の「やり抜く力」を伸ばすにはいろいろな方法がありますが、手っ取り早いのはそういう「やり抜く力」の強い集団に飛び込んでしまうことです。
人は自分たちで思っている以上に、自分が属している文化の影響をあらゆる面で強く受けています。
良くも悪くも、周りの「当たり前」が自分の「当たり前」になっていくのです。
基準の高い集団の中にいれば自分の基準も自然と上がるように、「やり抜く力」も強くなっていきます。
また、自分だけなら「やり抜く力」の強い集団に入ればいいし、リーダーとしてメンバーの「やり抜く力」を強化したいと思っているなら「やり抜く力」の強い文化を築いていくことで可能になっていきます。
本書に出てくる“「偉大な達成」を導く方程式”では
〈才能×努力=スキル、スキル×努力=達成〉
と、努力は二回影響を及ぼします。
たしかに才能は大事ですが努力することで初めてスキルとなり、スキルも努力することで初めて生産性を高めることにつながるのです。
才能やスキルに目を奪われがちですが、真に重要なのは努力だということがここからもわかります。
月並みな言葉になりますがやはり「継続は力なり」。
そして「努力」を「継続」する「やり抜く力」は、自分の手で伸ばすことができるのです。
もちろん、楽しむことも忘れずに。