人生読本~20代からの読書日記~: 3月 2017

2017年3月27日月曜日

「GRIT やり抜く力」アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳

今回の本はこちら。

 


●著者・・・アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳

●価格・・・1600円+税

 

 

GRIT」とは英語で“根性や気骨・失敗や恐れに対して歯を食いしばる(耐える)”という意味です。

この本ではその「GRIT」を「やり抜く力」と表現しています。

 

著者のアンジェラ・ダックワースさんは“人生で何を成し遂げられるかは「生まれ持った才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高い”と突き止めたことで、別名「天才賞」とも言われる「マッカーサー賞」を受賞した方です。

 

「やり抜く力」について話しているTEDトーク「成功のカギは、やり抜く力」の動画の視聴回数はなんと900万回以上に上ります。

 

この「GRIT やり抜く力」ではこれまでに行われた様々な実験や取材から、何かをやり遂げるのにいかに「やり抜く力」が重要かを説明しています。

 

また後半では自分自身の「やり抜く力」を伸ばす方法も様々な観点から書かれているので、実践していくことで他の全ての活動に良い影響を及ぼすことができます。

 

 

① 肝心なときにどれだけがんばれるかは、もちろん重要なことだが、進歩の妨げとなるのは“途中でやめてしまうこと”だ

 

1940年に行われたランニングマシンを使った実験で、過度な負荷をかけて走らせた学生たちのその後を調べたことで走った分数を見ればその後の人生における心理学的適応状態(一般的な社会生活を問題なく送れること)が驚くほど正確に予想できることがわかりました。

しかしその時走った分数というのは、体格や基礎体力の違いとはさほど関係がなかったそうです。

 

つまり、人生の長いマラソンでどこまで頑張れるかは、体格や基礎体力の違いよりも圧倒的に「努力」にかかっているということが分かったのです。

 

この時学生に走ってもらったのは一回だけだったそうですが、もし翌日以降も複数回走ることを許していたら「やり抜く力」の強い学生は何度も挑戦したのではないかと著者は予想しています。

 

そして複数回挑戦する中でひたすら頑張る人もいるでしょうし、どうやったら効率よく走れるのかを追求して結果を伸ばす人もいたかもしれません。

 

これは他のスキルも同じことで、ただ続けるだけで上達する可能性は常に残っているのです。

逆に、途中でやめてしまえば結果はそこまででスキルの上達も終わり。

 

何事も上達するためにはその時頑張るだけではなく、継続的に頑張り続けることが重要なのです。

 

 

② 必死に努力する以前に、まず楽しむことが大事

 

何事も“好き”なだけで上達するほど世の中は甘くありません。

練習し、研究し、そのことについて常に学び続ける必要があります。

 

しかし、だからこそ好きでもないことはなおさら上達するはずがないのです。

 

 

ベンジャミン・ブルームという心理学者によるとスキルは「数年ごとに3段階で」進歩するそうです。

 

「初期」は興味を見つけて掘り下げていく段階なのですが、この時は基礎的なことを遊びを通して学び興味を損なわないようにすることが重要です。自主性も大事で、押し付けや無理強いは良くありません。

 

「初期」で厳しくしすぎるとその後興味を失ったり、燃え尽き症候群となってしまう可能性が高まってしまいます。このように興味を損なってしまうと再び興味を持つことはなかなか難しいので、注意が必要です。

 

同様に子育てでも最初はやるべきことを押し付けるのではなく、子供が興味を持つことが何なのかしっかり観察することが重要です。

 

 

③ 自分の「やり抜く力」を強化したいなら、「やり抜く力」の強い文化を見つけ、その一員となること

 

自分の「やり抜く力」を伸ばすにはいろいろな方法がありますが、手っ取り早いのはそういう「やり抜く力」の強い集団に飛び込んでしまうことです。

 

人は自分たちで思っている以上に、自分が属している文化の影響をあらゆる面で強く受けています。

良くも悪くも、周りの「当たり前」が自分の「当たり前」になっていくのです。

 

基準の高い集団の中にいれば自分の基準も自然と上がるように、「やり抜く力」も強くなっていきます。

 

また、自分だけなら「やり抜く力」の強い集団に入ればいいし、リーダーとしてメンバーの「やり抜く力」を強化したいと思っているなら「やり抜く力」の強い文化を築いていくことで可能になっていきます。

 

 

本書に出てくる“「偉大な達成」を導く方程式”では

〈才能×努力=スキル、スキル×努力=達成〉

と、努力は二回影響を及ぼします。

たしかに才能は大事ですが努力することで初めてスキルとなり、スキルも努力することで初めて生産性を高めることにつながるのです。

才能やスキルに目を奪われがちですが、真に重要なのは努力だということがここからもわかります。

 

月並みな言葉になりますがやはり「継続は力なり」。

そして「努力」を「継続」する「やり抜く力」は、自分の手で伸ばすことができるのです。

 

もちろん、楽しむことも忘れずに。


2017年3月19日日曜日

「売る力 心をつかむ仕事術」鈴木 敏文著

今回の本はこちら。

 


●著者・・・鈴木 敏文著

●価格・・・770円+税

 

著者はコンビニ業界トップのセブン‐イレブン・ジャパンを設立した鈴木敏文さんです。

 

書名にもある「売る力」とは、いったいどのようなものでしょうか?

鈴木さんはこの「売る力」を「お客様から見て“買ってよかった”と思ってもらえる力」と定義しています。

 

モノが少なかった時代には売り手側から発信していればある程度売れましたが、現代のようなモノ余りの時代では、売り手側からではなく買い手を起点に考えなければそう簡単には売れません。

この状況の変化に対応するために鈴木さんは「お客様の立場で」考えることが非常に重要だとおっしゃっています。

 

この「売る力」では、著者鈴木さんの「お客様の立場で」考える信念や姿勢が繰り返し説かれています。

 

またセブン&アイ・ホールディングスが発行している広報誌「四季報」の中で行われた過去の対談も紹介されており、「お客様の立場で」考えることなどの重要性を違うジャンルのいろんな角度から提示しています。

 

お客様に「買ってよかった」と思ってもらえるためにどうしたらいいのか、いくつか内容をみながら考えていきたいと思います。

 

 

① 売り手に求められるのは、消費を正当化できる理由や選択を納得できる理由をお客様に提供すること

 

昔、まだ世の中にモノが少なかった時代は、売り手は百貨店のように数多くの商品を用意しそこからお客様に選んでもらうスタイルが一般的でした。

 

しかし現代はその頃よりも暮らしが豊かになり、モノ余りの時代に突入しました。

モノ余りの時代においてお客様は無数にある商品の中から選択するという行為自体に疲れてしまっています。

 

そこで、果てしなく続く商品棚から探してもらうのではなくお客様自身も気づいていない潜在的ニーズを掘り起こし、かつそれを選択する正当性も一緒に提供することで気持ちよく買っていただくことができるのです。

 

具体的にはイメージできていなくとも、商品を見て「そうそう、こういうのが欲しかったんだ!」と思ってもらえることで「買ってよかった」と思ってもらえる「売る力」に結びついていきます。

 

自分が買い手に回ったときにふと見つけたそういう感覚も非常に参考になります。

 

 

② 売り手の都合を前提に「相対的によりよいこと」を追求するのではなく、お客様の都合に合わせて「絶対的によいこと」を追求する

 

著者の鈴木さんは「お客様の立場で」考えるということを非常に重要視しています。

これと似た言葉で「お客様のために」というものもよく聞きます。

 

この「売る力」では、このふたつを明確に分けていて、徹底的に「お客様の立場で」考えるべきだと説いています。

 

「お客様のために」という考え方の場合、あくまで自分たちの現状を前提に自分たちのできる範囲内で考えがちになります。

ですが「お客様の立場で」考えた場合、本当にお客様が望んでいること、必要としていることならたとえそれが自分たちに不都合なことでもやらなくてはいけません。

 

セブン‐イレブンで「赤飯おこわおむすび」を作ったとき、試食した鈴木さんはすぐに本来の赤飯の味と違うことに気づいたそうです。

そこでどう作ったのか聞いてみたところ、本来赤飯はせいろで「蒸して」作るのが正しいつくり方なのに当時のセブン‐イレブンの工場に蒸し器がなかったため他のおむすびの製造ラインでも使っている炊飯器で「炊いて」作っていたそうです。

 

担当者はそれまで様々な赤飯を食べて調査していますからもちろん作り方を熟知しているはずなのですが、「蒸し器がない」という“自分たちの都合”で、本来の作り方を選ばなかったのです。

 

ですがお客様は「赤飯」と書いてあれば本来の「赤飯」の味を想像して商品を購入するはず。

食べた瞬間にセブン‐イレブンに失望することは目に見えています。

 

結局、新たな設備投資をして専用の蒸し器を設置し、本来の製造法で作られた「赤飯おこわおむすび」は発売直後から大ヒットを記録したそうです。

 

このように売り手の都合の範囲内で「一生懸命やる」のと、お客様の都合に合わせて「正しいことをやる」のとでは全く意味も結果も違うのです。

 

 

③ 真の競争相手は競合他社ではなく、絶えず変化する顧客ニーズである

 

個人でも組織でも同じだと思いますが、自分の得意分野というものがあった場合どうしても似たもの同士(同業他社)でどっちが勝ってるとか劣ってるとか比較してしまいがちです。

 

ですがたとえ自分たちでは他社を上回っていると思っていても、お客様の満足が得られていなければそれは単なる自己満足に過ぎません。

 

そもそもどの商品やサービスが勝っているのかの判断は買い手側がすることであって売り手側がすることではありません。

また今の時代、同業他社だけを見ていると思いもかけない異業種から競争相手が現れ自分たちを脅かす場合も多々あります。

 

そうやって周りだけを見ていても、実際に買っていただく相手である「お客様の立場で」考えることはできないでしょう。

 

そしてお客様のニーズというのは絶えず変化します。

 

斬新なものを提示しても、これまでの社会の中で一番情報の伝達の速い現代ではすぐに陳腐化してしまいます。

同じベクトルの商品であっても、一回はお客様の期待値の120%を提供して満足してもらっても次はその120%がお客様にとっての100%になるので、実質140%の商品を提供しないと満足してもらえなかったりとどんどんハードルが上がっていきます。

 

このように様々な意味で絶えず変化するニーズのなかで「変わらずにおいしいね」と言われ続けるためには、その変化する顧客ニーズに合わせて自らも変わり続けなくてはならないのです。

 

 

この「売る力」という本の中で常に一貫して説かれているのは、お客様が「買ってよかった」と思えるように常に「お客様の立場で」考えるということです。

そういう変わらない「視点」を持ちつつ新しい「ネタ」を追求することで、いつまでもお客様に選ばれ続ける企業経営ができるのだと思います。

 

自分の都合の範囲内での「当たり前」ではなく相手にとって「当たり前」のことを愚直なまでに積み上げていく姿勢は、どんな業界であってもとても大切な考え方だと思います。

 

この本には他にもセブン‐イレブンの店舗展開時の基本である「ドミナント(高密度多店舗出店)戦略」などのことも書かれていて、どんな人が読んでも参考になる点は多いと思います。

 

この「売る力」は、コンビニ業界でトップを走り続けるセブン‐イレブンの魂が詰まった一冊と言えるでしょう。

2017年3月8日水曜日

「一流の時間の使い方」中谷 彰宏著

今回の本はこちら。

 

●書名・・・一流の時間の使い方62

●著者・・・中谷 彰宏著

●価格・・・1300円+税

 

この「一流の時間の使い方」は、いわゆる“一流”と呼ばれる人たちと“二流”と呼ばれる人たちの違いを「スピード」という観点から浮き彫りにし、一流の人たちは「時間」や「スピード」というものをどう捉え扱っているかということがわかるように書かれています。

 

1項目24ページほど、全部で62項目の時間の使い方や時間に対する一流の考え方が具体的に書いてあり、構成としても読んですぐ実践するのに適した形になっています。

 

この「一流の時間の使い方」はまず冒頭に「この本は、3人のために書きました」として読者のターゲットをはっきり書いています。

  1. 時間に追われる毎日から、余裕を持ちたい人。
  2. 時間を生み出して、好きなことをしたい人。
  3. テンポを速くして、一流の人になりたい人。

 

つまり著者としても、この本の内容を我々がただ読むだけでなく実践してそれぞれの生き方に影響を与えることをゴールにしているのです。

 

それらを心に留めて読めば、「時間」という観点を軸に一流の人たちの行動力の源を学ぶことができるでしょう。

 

 

① やる気とは、スピードだ

 

仕事や勉強など、人生で何をするにおいてもやる気とは重要な要素です。

しかし多くの人はやる気について勘違いをしていると著者の中谷さんは指摘しています。

 

若手とかだと「やる気はあります!」と元気の良い印象を与えることはできるかもしれませんが、本当はそれではやる気の表明にはなりません。

 

やる気が見えるようにするためには、とにかく一歩でも二歩でも速く行動することが重要です。

 

たとえば知ってはいるけど普段なかなかお会いしないような人に会ったとして

「何かあったら是非お願いしたいんです」

というより

「実はこういう企画を考えているんですけど」

という方が圧倒的にやる気を感じます。

 

そのためにはその人に会えるかもわからないのに普段からその企画を考えておかなければなりません。

それこそが大事なのです。

 

無駄になったら嫌だからと何かが決まってから動こうとする人は、それだけ出だしが遅くなります。

たとえ無駄になっても構わないからと先に先に準備しておくことで、やる気とは表に出てくるのです。

 

この本とは関係ありませんが、僕の好きな言葉で

「明日はなんとかなると思う馬鹿者。今日でさえ遅すぎるのだ。賢者はもう昨日済ましている」

というのを思い出しました。

 

気合や手土産では、やる気を表すことはできないのです。

 

② 一流の人にとって、ノルマは「これ以上やっちゃダメ」というものです。

 

僕はこの文章を読んだとき、天地がひっくり返るような感覚を覚えました。

 

二流の人にとって「ノルマ」という言葉は「ここまでやらなければいけないもの」という意味を持っています。

 

たとえば、月に30冊の本を読むことを目標にするとします。ノルマは30/1か月です。

これだと、たとえ初日に2冊読んだとしても目標まで28冊足りません。

 

こういう考え方では精神的にも追い詰められていきますしペースもなかなかつかめません。

 

こういう時は、目標(ノルマ)を1日ごとに分割します。

するとざっくり1か月30日だとして、1日に1冊読めば目標は達成できます。

ノルマは11冊です。

 

こう考えると、1日に2冊読んだ場合予定に対して自分が巻いている(予定よりも速いペースになっている)という感覚になるので余裕も生まれ、小さな達成感を得ることができます。

 

また、全体のペースを把握することでやりすぎも防ぐことができます。

いくら早くノルマを達成したいと思ったからと言って読書ばかりしていては他のことに支障をきたす恐れがあります。

 

このように「ノルマ」というものの捉え方を変えることで、物事への取り組み方そのものが変化していくのです。

 

 

③ 勉強や習いごとや仕事、なんでもいいから形になるまで10年単位の時間がかかることをやっている人は、時間の使い方がうまくなります。

 

どんな仕事も10年やって一人前、なんて言われますが、日常生活ではついつい目の前の仕事をこなすことにのみ集中してしまいがちです。

 

しかし、そもそも10年単位で時間をかけるつもりでやると、結果に大きな影響を与えることになります。

 

この違いは、長期的な視点に立っているかどうか、ということ。

 

どのようなことでも、長い期間続けようと思えばそこに様々な工夫も必要だし、作業を効率化していったりもするでしょう。

そうすることで結果的に時間の使い方が磨かれていき、また物事を持続する力もついてくるのです。

 

 

この「一流の時間の使い方」では、一貫して「スピード」の重要性が説かれています。

ですがそれはただ単に作業スピードを上げるということだけではなく、スピードを上げるための準備が重要ということでもあります。

一流の人も二流の人も同じ人間ですから、作業の速さというものはそれほどあげられません。ほとんどは準備の差でスピードが格段に変わります。

普段からどれだけ準備できているか。暇なときに何をしているかにかかっているのです。

 

また自分のスピードを上げるということは、同じ仕事に関わる他人の時間も尊重するということです。

この本ではそういった他人の時間を尊重する気持ちも随所で感じることができます。

 

自身の作業が遅いだけならいざ知らず、他人の時間も奪うようなことしていては到底一流になることはできません。

 

無意味な飲み会に誘ったりと直接時間を奪うことでなくとも、チームワークが大半になった昨今では自分の仕事が遅いだけで周りの人にも多大な迷惑をかけてしまうことがままあります。

 

そんな時、ただスピードを上げるだけで他人を尊重することにもなり評価も上がり、何より自分に余裕ができさらにスピードを上げる工夫ができるようになるのですから、やらない手はありません。

 

著者の中谷さんも書いていますが、本は目的ではなく手段です。

読むだけではなく、実践して初めて意味のあるものとなります。

 

具体的な方法がたくさん載っていますので、ぜひ自分の生活に活かしていきたいものです。