人生読本~20代からの読書日記~: 10月 2017

2017年10月15日日曜日

「人生の勝算」前田 裕二著

今回の本はこちら。



●書名・・・人生の勝算
●著者・・・前田 裕二


”ヒト”と”ヒト”の「絆」から、対価が生まれる


著者はSHOWROOMというライブストリーミング(リアルタイムでの動画配信)サービスを運営している前田裕二さんです。

前田さんはSHOWROOMを通して、これまではなかなか個人で食べていくだけのお金を稼ぐことができなかった表現者たち(ミュージシャンやアイドル、俳優など)がそれぞれの努力に応じて収入を得られる仕組みを作っています。


最近では消費者がお金を払う対象が、以前と少し変わってきました。

これまでは単純になにか”モノ”をもらう対価としてお金を支払っていたのですが、情報量も物質的な量も様々なものが豊かになった現在では、その”モノ”の価値は少しずつ下がっています。

ただの”モノ”はどこでも誰でも手に入れることができるので、今度はそれを「誰から買うのか」が問題になります。

これは上記の表現者たちが作るいわゆる芸術作品的なものも同じで、ただ「いい作品」という”モノ”だけを売るのではなく、その作品を作った”ヒト”と消費者の関係=「絆」の中でより多くのお金を支払ってもらうことができるのです。

これからの時代にはいかに消費者との「絆」を作っていけるかが重要になってきます。


「常連客」を”中の人”にすることでより強固なコミュニティを作ることができる


前田さんはこの本の中で「なかなか潰れないスナック」や「AKB48」をよく例に出していますが、両者の共通点は「常連客を中の人にした」ことです。

”中の人”というのは、ただ受け身の消費者ではなく運営側であったり共同体意識を持った人たちのこと。

スナックであればママが酔いつぶれた後に後始末をする馴染みのお客さんだったり、AKB48であればお気に入りの子を応援するために個人で動画を作って宣伝してくれたりする人のことです。

このようにお客さんを”中の人”化することができれば状況に応じてより大きなお金を使ってくれるし、他のお客さんへも働きかけてくれたりします。

そうやって強固なコミュニティを作ることができれば、ただ単に”モノ”(この場合はお酒や歌)だけを売るよりも何倍も大きな価値を生み出すことができるのです。


小学生時代の路上弾き語りから得た気づき


この「”ヒト”の「絆」から、対価が生まれる」というのは、著者である前田さん本人の小学生の頃の経験から実感したものだそうです。

前田さんは小学生の頃もらったギターで路上での弾き語りをやっていたそうなのですが、最初はなかなかお金を稼ぐことができない。

曲のクォリティだけで言えば、経験が短いのだからそこらの大人のミュージシャンにもかなうわけがありません。

そんななか、あるお客さんからのリクエストに少し工夫をして応えることでみごとそのお客さんとの「絆」を作り、なんと路上ライブにも関わらず1万円札をもらうことができたのです。

具体的な工夫方法やお客さんとの「絆」の作り方はこの「人生の勝算」を読んでいただきたいのですが、前田さんのこの体験がSHOWROOMを作るきっかけの一因にもなり、ビジネスの本質をとらえる大きな一歩にもなったのです。


まとめ


ネットが発達し人間同士の関係はドライになったといわれたこともありましたが、だからこそ多くの人が「誰かとのつながり」を心から求めています。

そしてそんな時代だからこそ前田さんの運営するSHOWROOMは”ヒト”と”ヒト”の「絆」を作り、そこから価値を生み出すことで努力が正当に報われる社会を作ろうとしています。

努力を継続することで強固なコミュニティを作り、そこにできた「絆」から大きな価値を生み出していく。

これからの”人生の勝算”は、まさにこの一点にあるのです。





関連書籍記事

「メモの魔力」前田 裕二著

2017年10月9日月曜日

「マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方」齋藤孝監修

今回の本はこちら。



●書名・・・マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方
●監修・・・齋藤 孝
●マンガ・・・阿部花次郎


”現代の戦い=ビジネス上の交渉”に「孫子の兵法」を活かし、物事を自分に有利に運ぶ


「孫子の兵法」とは古代中国の兵法書、つまり戦争をいかに行うかを説いた書です。

現代では経営などに応用している人も多く、書店のビジネス書の棚にも解説書のようなものをよく見かけます。

もちろん原文は漢文ですし、そもそも戦争について書かれたものなのでどうやって応用したらいいかわからないという人も多いかもしれません。

この「マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方」では、ビジネスの場で実際にどのようにして「孫子の兵法」の考え方を応用したらいいかをわかりやすいマンガで紹介しています。

各章ごとに

環境編/個人編/指導者編/競争編/失敗・挽回編/チーム編

と分かれており、マンガと共にそれぞれの章の中で出てきた「孫子の兵法」のフレーズの解説や”ビジネスの場での応用の仕方”を詳しく書いた説明があるため非常にわかりやすい構成になっています。


「孫子の兵法」は実戦に即した思考法が学べる


「孫子の兵法」はおよそ2500年ほど昔に書かれた兵法書ですが本当に現代のビジネスの役に立つのでしょうか?

答えは「大いに役立つ」です。

もともと具体的かつ現実的な内容で書かれたものなので、少し抽象化して考え方を理解すればかなり幅広く応用できます。

それは組織運営はもちろんのこと、それぞれの仕事内容が複雑で多岐にわたる現代では個人にも当てはめることができるのです。

また「孫子の兵法」ではスピードや時間の重要性も説いており、そういう面でも、社会の変化するスピードがどんどん加速している現代でこそ役に立つ考え方なのです。


例:「利に合わば而(すなわ)ち動き、利に合わざれば而(すなわ)ち止む」


文章の意味としては
「(古代の戦闘が巧みな者は)敵の戦闘態勢が自軍に有利になれば戦闘を仕掛け、有利にならないときは合戦に入るのを中止していた」
という感じ。

自分に有利な状況ならやり、そうでなければやめる。

当たり前のようですが、実際にはなかなか出来ていないのが現実ではないでしょうか。

たとえチャンスだと思っても他人の目を気にしたり必要以上にネガティブになって手を出さなかったり、疲れていたり状況が悪いのに無理をしてドツボにはまったり…

しかし合理的に考えれば、これではうまくいくはずがありません。

状況を味方につけてこそ、何事もうまくいくのです。

また「孫子の兵法」にはこの”利”、すなわち自分や相手の態勢や周りの状況を上手くコントロールする方法も多く書かれているので、運まかせにするわけではなく自発的に有利な状況を作っていくことも出来るのです。


まとめ


この「マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方」では、主人公が会社で新たな課に配属されたことをきっかけに「孫子の兵法」を学び、実践していく中で成長してく姿が描かれています。

本編で出てくる事柄はチームで働いている以上誰にでも起こりうることばかり。

これを読んで自分の仕事に取り入れるだけでも大きな変化になると思います。

「孫子の兵法」を学び始めるとっかかりとしては、非常にわかりやすく有効な一冊です。


2017年10月7日土曜日

「1分間バフェット」桑原 晃弥著

今回の本はこちら。


●書名…1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則
●著者…桑原 晃弥


誠実さに裏打ちされたバフェットの人物像


投資に興味を持ち始めたら必ずどこかで知るであろう人物、ウォーレン・バフェット。

子供の頃から小さなビジネスを始めて資産を運用し巨万の富を築いた、投資の世界の巨人です。

バフェットについての本は数多く出ていますが、この「1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則」はバフェットについての様々なエピソードをそれぞれ1分間で読める程度にまとめられた、非常に読みやすい構成で書かれています。


投資で儲けた、というとなにかずるい方法や不正ぎりぎりの方法をも駆使して荒稼ぎした…なんて思うかもしれませんが、ウォーレン・バフェットに限ってはそういう後ろ暗い方法とは全くの無縁です。

むしろ他の投資家たちから見たら過剰なほど不正を嫌う、誠実な人物。

そしてその誠実さは法律的な物に限らず、扱う株式銘柄の企業やその企業の先にいる顧客達にまで向けられた広く深いものなのです。


「知性、エネルギー、そして誠実さ。最後が欠けていると、前の二つはまったく意味のないものになる」


バフェットは偉大なまでに誠実であったがために、巨万の富を築くことができました。

投資の世界ではある日いきなり億万長者になることも夢ではありませんが、誠実さを欠いていればその富もすぐに崩れ去ってしまいます。

アメリカの金融の中心であるウォール街などではとにかく利益を求めてマネーゲームを繰り返す投資家も多いですが、バフェットはそれらの投資家とは一線を引いています。

なぜならそのような強欲な姿勢は、自分たちの利益のために世界の経済状況を混乱に陥れることさえあるからです。

バフェットにとってそのようなやり方をする人たちは”投機家”であり、バフェットにとっての”投資”は主に株式の長期保有です。

それは株の売買によって利ザヤを稼ぐのではなく、その企業を信頼し未来に期待して、自分もその企業に協力するという考え方だからです。

そうして信頼の上に関係を築いていき、誰もがうらやむ大富豪になることができたのです。


「ライン上がダメなのはもちろん、ラインに近くても違反とみなす」


2006年、アメリカの多くの企業がストックオプション(自社株購入権)の付与日を不正操作して大きな問題となりました。

ストックオプションとはその会社の役員や従業員が決められた価格で自社の株を買うことができる権利のことで、売却するときに市場価格との差が利益となるため現金と別の報酬体系として導入されることがあります。

この付与日を不正に操作し株価が安い日にして利益を増やす…といったことがありました。

もちろんバフェットの持つバークシャー・ハザウェイ社はそんな不正と無縁でしたが、それでも傘下の企業に「ビジネスの世界で最も危険な言葉は、五つの単語で表現できます。『他の誰もがやっている(Everybody else is doing it)』です」と念を押して呼びかけました。

またソロモン・ブラザーズの国債不正入札の時も「ライン上がダメなのはもちろん、ラインに近くても違反とみなす」と社員に言い、違反すれすれも許さないという姿勢で厳に戒めたのです。


まとめ


バフェットは、他の投資家と同じやり方ならもっと資産を増やすことも出来た状況でもそうはせず同僚から「意図的に利益を抑えていた」と言われるほど堅実に自分のやり方を貫き通している投資家です。

それはたとえ儲かりそうな話でも自分が理解できない業界には一切手を出さないといった自分自身に対する誠実さでもあり、また利益が出ればなんでもいいというような考え方を排した他の株主や顧客に対する誠実さでもあるのです。

この「1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則」はそんなバフェットの誠実な人物像がわかりやすく、また短時間でも読みやすい形で書かれています。

この本をきっかけにバフェットの思考をさらに深く読み解き自分の生活に応用していくことは、少なからず成功への確かな近道となることでしょう。