今回の本はこちら。
●書名・・・老いた親を愛せますか? それでも介護はやってくる
●著者・・・岸見 一郎
著者はアドラー心理学をわかりやすく説明し大ヒットした「嫌われる勇気」を書いた岸見一郎さんです。
岸見さんはご自身のお子さんや親との関係を例にアドラー心理学について説明することがよくあるのですが、この「老いた親を愛せますか?」は岸見さんの父親が認知症になり介護することになった前後までを軸に書かれています。
岸見さんは二十代中ごろに母親を脳梗塞で亡くし、その後父親のアルツハイマー型認知症の介護をすることになります。
その看病や介護の中でそれまであまり意識していなかった親との関係が明確になり、それでいて病状によってその関係も変化していくのでともするとわれわれ子供は困惑してしまいます。
それに介護は決して楽ではありませんし、親との関係まで悪化してしまっては心身ともに疲弊する一方です。
この本ではそうならないための心構えもアドラー心理学の考え方を踏まえて優しく教えてくれます。
僕がこの本を読んだのは、実際に僕の母が脳腫瘍で入院している時でした。
その頃は治療も少しずつ進み主治医から「今後治っても認知症のような症状が残る」と言われていたのでこの本の中盤以降、岸見さんと認知症の父親との生活の部分が参考になるのだろうと思いながら読んでいました。
結果的に僕の母は退院することなく亡くなってしまいましたが、この本を読むことで先の見えない入院中の不安をかなり和らげ落ち着きを取り戻すことができました。
また、岸見さんが入院中の母親に付きっ切りで看病していた話も共感することができ、つい自分と重ねて読んでしまいました。(岸見さんは当時と現在の病院設備との違いもあり最後の方は一日18時間も病床に付き添っていたというのでとても比べられるものではありませんが…)
ちょっとしたケガや病気などももちろん大変ですが、つい先日まで元気だった親の意識が急になくなって入院したり、これまで何の問題もなかった親との会話がなんだかかみ合わなくなった時の子供の孤独感は相当なものです。
そんなときこの「老いた親を愛せますか?」に書いてある考え方は確実に心を軽くしてくれます。
そしてその考え方以上に、自分と似たような経験をした人が他にもいるという事実が僕たち子どもを孤独から救ってくれます。
僕たちが生まれた時から一緒にいる親は、確実に僕たちよりも先に老います。
そして運が悪ければある日突然倒れることだってあるのです。
"その時"が来てからでは感情や忙しさに押し流されてしまいますが、例えば"その前"にこの本を読めれば、多少は心の準備をすることができます。
まだ親が元気で、自分に今後のことを考える余裕がある時にこそ一読しておくことをおすすめします。
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