●書名・・・これからの世界をつくる仲間たちへ
●著者・・・落合 陽一
現代の魔法使いともいわれる落合陽一さんの2016年の著書です。
魔法をかける人="クリエイティブクラス"になる
コンピュータテクノロジーが発達し、私たちの生活は劇的に変化し続けています。
その変化の中で、落合さんは今後人が「魔法をかける人」と「魔法をかけられる人」に二分されていくと言っています。
"魔法"とはコンピュータによってブラックボックス化された技術のことで、例えば普通の人は普段パソコンの中で何がどう動くことによってメールが使えたりネットが使えたりするのかよくわかりません。
よくはわかりませんが、中身の技術に精通していなくてもパソコンの使い方さえ知っていれば誰でもメールやネットを利用することが出来ます。
このように"魔法"の中身を知らなくても生活に支障はありませんが、例えばパソコンならプログラミングのような"魔法の中身"を知っていることでできることは格段に広がります。
このような人たちは"魔法"を知り"魔法"の力を使うことで新たな価値を創造していく「クリエイティブクラス」となるのです。
今後はコンピュータに使われる人と、コンピュータを使う人に分かれる
現在コンピュータはあくまで道具の一つとみなされており、「人がコンピュータを使う」という認識が当然されています。
しかし今後AIが発達してくると、逆に「コンピュータが人を使う」という状況も珍しくなくなっていきます。
たとえば建築現場などは「全体を見て指示を出す現場監督」がいて「実際に手を動かし建物を作る労働者」がいるわけですが、AIが発達して作業の指示を人間の現場監督よりも効率的に出せるようになればAIの指示で各労働者が作業に取り掛かるという状態に変化していきます。
このとき人間の労働者はAIの末端機関として作業をするわけですから、「コンピュータが人を使う」という状態になっているわけです。
他にも同様の変化が起きてくる業種は多数あるでしょう。
逆に、人間が考えたことをコンピュータの力を借りて実現してくと言うようなこともこれまでより多くなってきます。
発達したAIや蓄積されたビッグデータは、今まで以上に強力に人間を手助けしてくれることでしょう。
これらはどちらが優れているかという話ではなく、あくまで個人の生き方の選択の問題です。
しかし、コンピュータに使われる側の人間というのは替えが効くのでどうしても大きな価値は生み出しにくいでしょう。
己の価値を高めコンピュータを使う側になるためには、"魔法をかける人"になる必要があるのです。
"魔法をかける"ことができるほどの専門性は、コンピュータにはない「モチベーション」によって身につく
"魔法をかける人"になるためにはいくつもの能力が必要なのですが、その中で重要なのが「専門性」です。
専門性はどうしても気になる疑問を考え抜いたり、好きなことを突き詰めたりすることで獲得することが出来ますが、その原動力となるのは「これがしたい」「これを知りたい」というモチベーションです。
そしてこのモチベーションという力はコンピュータにはありません。
コンピュータは指示されたことをやったりものすごい数の作業を淡々とこなすのは得意ですが、今のところ自発的に「これをやりたい」といったようなモチベーションを発揮することはできません。
これこそが現時点での人間とコンピュータの違いであり、人間がコンピュータに対して持っている優位性の一つなのです。
このモチベーションをもって専門性を高め、自分の価値を確立することで今後の世界のどこでも活躍できる「魔法をかける人」になることができるのです。
まとめ
これから先の世界でコンピュータに使われる"魔法をかけられる人"ではなく創造性に富んだ"魔法をかける人"になるには様々な能力が必要です。
この「これからの世界をつくる仲間たちへ」ではコンピュータによる今後の社会の変化、またそれに対応し"魔法をかける人"になるために必要なことなどがかなり詳しく書かれています。
文章もロジカルでありながら落合さん自身の「モチベーション」も感じることができ、不思議な読みやすさを感じました。
これからの世界で自分の専門性を高め"魔法をかける人"になる、ひいては今後の自分自身の生き方の指針にもなるような、そんな大きな可能性を秘めた一冊です。
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